
業務効率化や意思決定を支援する手段として生成AIへの注目が高まる一方で、社内調整に時間を要し導入が進まない、PoCで止まり実装に至らないといった課題を抱える企業は少なくありません。必要性を理解していても、体制や方針が定まらず前進できない現場が多いのが現状です。
本記事では、AI導入が停滞する主な原因を整理したうえで、導入に成功している企業に共通する五つの要素と、無理なく始めるためのスモールスタートの考え方を分かりやすく解説します。
お役立ち資料:失敗しない生成AI導入社内環境構築で押さえるべきポイント
停滞を防ぎ、着実にAI導入を進めるためには、まず「なぜ止まるのか」という原因を明確にし、最短ルートでゴールに向かうための道筋を描く必要があります。その出発点となるのが「目的の明確化」です。
「進めたいのに進まない」状況の多くは、以下の3つの壁に起因しています。導入を前に進めるうえでは、最初の壁である「なぜ生成AIを導入するのか」を明確にすることが出発点となります。業務課題や導入目的、成功指標(KPI)が定義されていないと、社内で議論しても方向性が定まりません。
表1:生成AI導入段階で起こる課題(壁)
| 課題 | 概要 |
|---|---|
| 目的の 不明確さ | 「生成AIを導入すること」が目的化し、本来解決すべき業務課題や成果目標が明確になっていない。 |
| 情報過多 | 市場には多様なツール・事例・ベンダー情報があふれており、自社に合った判断軸を見失いやすい。 |
| 社内調整の難航 | IT部門・現場・経営層の間で視点が異なり「誰がどの範囲で導入を担うのか」が曖昧なまま議論が進む。 |
生成AI導入をスムーズに前進させている企業は、技術選定よりも先に、その後の「事業定着」を見据えた戦略的な視点を持っています。 この視点が欠けると、多くの企業と同様に、AI導入はPoC(概念実証)で停滞したり、本番実装後に使われなくなったりする原因となり、「技術検証」に偏って「事業への組み込み」がおろそかになってしまいます。
実際、経済産業省が2024年6月に取りまとめた報告書(「生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方2024」)でも、導入自体は進む一方で、「組織として日常業務への組み込み」や「経営層の関与」が停滞していることが指摘されています。
一方で、この停滞を打ち破り、成果を上げている事例も増えています。例えば、旭鉄工のように生成AIを活用した業務の効率化・最適化を実現した企業や、メルカリ(出品した商品の改善提案機能を導入)のように、生成AIを既存サービスの付加価値向上に繋げ、スモールスタートで顧客価値を創出している企業があります。
これらの成功企業が徹底しているのが、AIを業務フローの一部として機能させ、成果を明確に測定し、フィードバックで改善を続けるという、「業務定着化のサイクル」です。
このサイクルを回すため、技術選定の前に「何のために導入するのか(目的とKPI)」を明確にする目的志向のアプローチと、「仮説を立て・検証する力」に基づくスモールスタートが重要となります。導入の成否を大きく左右する「5つの成功要素」をご紹介します。
図1:変革のための生成AIへの向き合い方
出典:生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方2024(令和6年6月)<概要>
まず重要なのは「どの業務の、何を、どれだけ良くしたいのか」という目的が最初から一本の線でつながっていることです。以下のように課題→ユースケース→KPIが一貫していると、社内調整がスムーズになります。
●業務課題:議事録作成に90分かかり、対応の後ろ倒しが発生
●ユースケース:生成AIで要約ドラフトを自動生成
●KPI:作成時間30%削減、配布リードタイム半減
ユースケースの整理・特定には、大きく2つのアプローチがあります。
●ユースケース起点型:解決したい業務課題が明確な場合に有効です。「この業務を効率化したい」という目的から逆算して環境を導入するため、投資対効果(ROI)を把握しやすい点が特長です。
●基盤先行型:まずセキュアな小規模環境を整備し、実際に触れながら用途を探っていく方法です。現場が活用イメージを持ちやすく、予想外の有効なユースケースが現場から生まれやすいというメリットがあります。「特定の課題を今すぐ解決したい」のか、「全社的な活用文化を醸成したい」のか、企業の風土やフェーズに応じて、最適なアプローチを選択することが重要です。
また、本番KPIに加えて、PoCで短期間に評価できる「検証用KPI」(例:精度◯%、処理時間◯%削減)を別途設定しておくと、「何をもって成功とするか」が明確になり、意思決定が格段に進みやすくなります。
生成AIの実用性は、AIが出す「汎用的な回答」ではなく、社内ナレッジを参照して出す「業務に即した回答」によって決まります。そのため、PoC前に最低限のテストデータやナレッジを整えることが重要です。例えば、問い合わせ対応支援や文書生成・検索のユースケースでは、以下のデータセットが必要となります。
●過去のFAQ、問い合わせログ、文章サンプル
●よくあるパターン・例外的なパターンを分類
●期待される「正解アウトプット例」をセットで用意
生成AIは、入力データの品質に大きく影響されます。データが古い、粒度がバラバラといった状態では、「AIが悪いのか、データが悪いのか」を判別できません。成功企業は、この「検証に必要なデータ準備」を、PoCにおける重要なタスクの一つとして位置づけています。
AI導入が成功する企業は、精度より先に「業務フロー設計」を固めています。
●どの工程をAIが担当するのか
●前後プロセスで人がどう関与するのか
●どの工数が、どれだけ削減されるのか
これを業務フロー図レベルまで落とし込むことで、PoCの評価が「AIの賢さ」ではなく「業務インパクト」として語れるようになり、社内承認を得やすくなります。
成功企業では、PoCに必ず現場の利用者が参加しています。
●実際に触ってみて評価する
●使いづらい部分を定性的にフィードバック
●精度や表現を定量・定性で記録
現場が入らないPoCは、どれだけ精度が高くても「使いたい」という動機付けにはつながりません。
成功企業ほど、最初から壮大な計画を立てるのではなく、以下のようにスモールスタートを徹底しています。
●1〜3ヶ月で結論を出す短期PoC
●ダメなら早く撤退して次に進む
●小規模で検証して成功パターンを積み上げる
前述の「5つの成功要素」は導入を前に進めるうえで重要ですが、自社だけで形に落とし込むことは簡単ではありません。業務課題の整理、KPI設定、データ準備、業務フロー設計、現場巻き込みなど、いずれか一つでも欠けると導入が止まってしまいます。
エクシオ・デジタルソリューションズ(以下EDS)は、こうした企業の「つまずきポイント」を一つずつ解消するために、構想整理からPoC支援、定着化までを一貫して伴走します。
Microsoft社とのパートナーシップのもとで培った技術力を活かした「セキュアな生成AI活用基盤の構築」はもちろん 、導入コンサルで得た知見をもとに、課題起点のユースケース特定、効果を測るためのKPI設計、データ整備、業務フローへの組み込みなど、導入プロセス全体を段階に応じて支援しています。
また、企業の状況に応じて「ユースケース起点型」「基盤先行型」のいずれにも対応し、最適な導入ルートをご提案します。
さらに、無償の簡易検証(PoC)を実施しており、お客様のユースケースが生成AIでどこまで実現できるのか、EDS社内環境で検証した結果をレポートとしてご提出します。「まず小さく試す」ための最初の一歩を低リスクで踏み出せます。
図2:エクシオ・デジタルソリューションズの生成AI導入時におけるサポート概要
生成AI導入を前に進めるうえで重要なのは完璧な計画をつくることではなく、「業務課題を明確にし、効果を測れる指標を定め、小さな検証から始める」という行動の積み重ねです。
成功企業は、成果の出やすい領域から検証を行い、データの準備や業務フローとの整合性を確認しながら、現場の声を反映させるサイクルを回しています。
EDSの伴走支援サービスは、この「スモールスタート」を確実に成功させるため、構想整理からPoC、定着までを一貫してサポートします。
基盤構築からコンサルティングまで、ユースケース起点型、基盤先行型のどちらのアプローチにも対応し、無償PoCを通じて「まず小さく試す」第一歩を低リスクで実現可能です。「どこから始めればよいか分からない」「まず社内を納得させる材料がほしい」という段階でも問題ありません。
貴社の状況と成熟度に合わせ、最適な進め方をともに設計し、生成AI導入を着実に前へ進めるお手伝いをいたします。

2025/12/26 | カテゴリ:AI
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