ChatGPTの登場以来、大きな話題を集めている「生成AI」。「うまく使えば、仕事がグッと楽になる」と言われながらも、「うちの会社は、ちょっと…」と足踏みしている企業も少なくありません。
本記事では、企業や自治体の生成AIの導入状況や、社内データとの連携による業務DXの実現について、事例を紹介しながら、生成AIの可能性について解説していきます。
既に生成AIは日常生活や趣味の範囲でも使われはじめ、もう「知っている」「使ったことがある」という方も多いかと思いますが、生成AI(Generative AI)は、テキスト、画像、音声、動画などのコンテンツを自動生成するAI技術の総称のことです。
膨大なデータを学習した大規模言語モデル(LLM :Large Language Models)と呼ばれる、文章の理解や生成を人間と同等レベルで行うことができるAIモデルを基盤とし、ユーザーが自然な言葉で指示するだけで文章や画像など、多彩な出力が可能になります。
生成AIは、文章の自動生成や要約、情報収集、画像生成や解析、コードの記述、さらには対話型のカスタマーサポートなど、生成AIの活用シーンは日々拡大しており「調べる」「考える」「作る」といった知的労働の概念そのものを変えつつあります。
特に2022年に登場したOpenAIのChatGPTは公開されてからわずか数ヶ月で1億人以上に利用され、これをきっかけに生成AIを知った人も多く、生成AIの認知度を急激に高めることになりました。
その後も生成AIモデルの性能が飛躍的に向上することで、専門用語や複雑な文脈の理解力も増し、業務利用にも十分対応可能なレベルに到達しているとされています。
総務省の「令和6年版情報通信白書」によると、「生成AIの活用方針を定めている」と回答した日本の企業は42.7%にとどまり、米国やドイツ、中国の約80%と比べて導入戦略の策定が遅れていることが明らかになっています。
出展:「令和6年版情報通信白書」図表Ⅰ-5-1-4 生成AIの活用方針策定状況
また、日本企業のうち「生成AIを業務で使用中」と回答した割合は46.8%で、米国やドイツ、中国では70~80%近くが使用中であるのに対し、日本は慎重な姿勢が目立ちます。
ただ、「トライアル中」や「使用を検討中」という回答の割合は多いことから、潜在的なニーズは高く今後の生成AI利用は増えていくと思われます。
出展:「令和6年版情報通信白書」図表Ⅰ-5-1-5 業務における生成AIの活用状況(メールや議事録、資料作成等の補助)
さらに、生成AI活用の効果についての質問には「業務効率化や人員不足の解消につながると思う」という回答が約75%と最も高く、これから多くの企業で人手不足が深刻化する課題に対し、生成AIの可能性について期待する声とも言えるでしょう。
出展:「令和6年版情報通信白書」図表Ⅰ-5-1-6生成AI活用による効果・影響(日本)
これらのデータから、日本企業での生成AIの導入状況はまだ慎重で、動きだすのはこれからというところだが、生成AIへの期待大きいことがわかります。
自治体においても、総務省の調査(2024年12月31現在)で、生成AI導入は、「都道府県」で83.0%、「指定都市」で85.0%となり、その割合は高いことがわかります。その一方で、「その他の市区町村」では「都道府県」や「指定都市」に比べその差は大きく、28.8%と低い数値となりました。
出展:令和7年4月総務省「自治体におけるAIの利用に関するワーキンググループ(第3回)事務局提出資料」
前回調査(令和5年12月31日現在)と比較すると、「都道府県」(前回51%)、「指定都市」(前回40%)ともに大幅に増加、さらに、「その他の市区町村」においても、19.4ポイントの増加(前回9.4%)となり、「都道府県」や「指定都市」に比べ低い数値とはいえ、こちらも大幅な増加といるでしょう。
また、「その他の市区町村」においては導入済~導入検討中(導入予定あり)を含めれば全体の50.3%(前回39.5%)と10.8ポイントの増加となり。過半数を超えました。
これらのデータから、自治体は企業よりも導入が進んでいるが市区町村レベルでは企業同様に、まだこれからという状況のようです。しかし、導入割合は急増しており、自治体でも職員数の減少が課題となる中、効率的な自治体運営に向けて活用が広がることが予想できます。
少しずつとはいえ、企業などで導入の動きが進んでいる生成AI。その活用方法の多くが文章の自動生成や要約、情報収集などが主流のようです。もちろん、これらも効果的な活用法ですが、さらに進んだ活用方法として、企業などの組織ならではの活用方法があります。それが、社内に蓄積されたドキュメントや各種業務データなどと連携させる方法です。
生成AIは単体利用だけでなく社内データと連携することで固有の知見を活かした、より高度な活用により、業務の効率と品質を同時に向上させることができ、業務DXも強力に推進することが可能になります。
では実際どのようなことができるのでしょうか。以下は生成AI単体ではできない、社内データとの連携により実現する業務改善例です。
できること | 内容 | なぜ連携が必要? |
---|---|---|
社内ナレッジに基づく迅速な回答 |
社内文書やFAQをAzure OpenAI(※1)に連携し、社内問い合わせ対応を自動化 |
これらの情報は社外には存在せず、生成AI単体ではアクセスできない |
個別顧客に最適化された提案書の自動生成 |
行政文書や条例データをAIに学習させ、住民からの問い合わせに自動応答 |
顧客ごとの情報は顧客の管理情報や営業日報など社内にしか存在しない |
社内業務の文脈に応じたレポート要約・作成 |
過去の商談履歴、契約内容、顧客の業種・課題に応じた提案書を自動作成 |
文脈(プロジェクトの背景や関係者)を理解するには社内データが不可欠 |
社内ルール・ポリシーに準拠した文書生成 |
社内規定に沿った契約書、稟議書、報告書などを自動生成 |
社内ルールやフォーマットは企業ごとに異なる |
リアルタイムの業務データに基づく意思決定支援 |
社内ナレッジベースと連携したAIチャットボットを導入 |
リアルタイムの業務データは社内にしか存在しない |
※1:ChatGPTのようなOpenAIのAIモデルをMicrosoft Azure上で提供するクラウドサービス
いくら自社の事といえど、いざ社内のことを調べるとなれば「誰かに聞く」「資料を探して調べる」などが必要になり、「誰に聞けばいい?」「その資料はどこにあるの?」と特に忙しい時には何かと困ることも多いと思います。
しかも「相手によっては聞きにくい」「資料を全部確認する時間がない」ということもあるのではないでしょうか?そんな時に社内の情報に一番詳しい頼れるパートナーになってくれるのが「社内データ連携をした生成AI」なのです。
生成AIが単なる業務の自動化の枠を超え、利用者の判断力や創造力を支援し業務の進め方を変革できる「知的パートナー」となれば、今後の課題となる人手不足の解決にも大きな期待となることでしょう。
では、生成AI導入済みの企業や自治体では、どういった活用方法で、どのような成果が出ているのでしょうか?
すでにお伝えした通り、現時点での調査結果からは、生成AIの導入や業務への活用はまだ限定的であると思われます。しかしながら、すでに導入を進めている企業や自治体では、業務の効率化を通じて生産性を高めた成功事例も数多く報告され「(業務DXに)成功しているところは(生成AIを)使っている」。まさにそんな状況と言えるのではないでしょうか。
以下は企業や自治体の生成AI活用事例の一部をまとめたものです。取り組み内容としては社内データ連携による業務効率化や、お客様サービスの質を向上させた事例を中心にご紹介しています。
企業・自治体名 | 取り組み内容 | 成果・特長 |
---|---|---|
大手不動産会社 |
社内文書やFAQをAzure OpenAIに連携し、社内問い合わせ対応を自動化 |
問い合わせ対応時間を大幅短縮、ナレッジ共有の効率化 |
県庁 |
行政文書や条例データをAIに学習させ、住民からの問い合わせに自動応答 |
職員の業務負担軽減、住民サービスの質向上 |
地方銀行 |
社内規定やマニュアルをAIに統合し、行員の業務支援に活用 |
業務の属人化を解消、対応スピード向上 |
総合商社 |
社内データベースと連携し、営業支援や資料作成をAIが補助 |
提案資料作成の時間を半減、営業効率アップ |
IT企業 |
社内ナレッジベースと連携したAIチャットボットを導入 |
問い合わせ対応の自動化、ナレッジ蓄積による精度向上 |
都市銀行 |
顧客対応チャットボットに社内FAQや業務マニュアルを統合 |
顧客満足度向上、対応時間の短縮 |
生命保険会社 |
営業支援AIに社内資料を連携し、代理店向けアドバイスを自動提供 |
営業活動の質向上、24時間対応可能 |
外食チェーン |
店舗の賞味期限管理に画像+社内データをAIで統合 |
食品ロス削減、業務の標準化 |
今後こういった成功例が、もっと増えていけば、多くの企業が抱えている課題を解決する大きなヒントとなり、まだ導入に踏み切れていない企業の後押しにもなるでしょう。
本記事では企業や自治体の生成AIの導入状況や、社内データと生成AIの連携により業務DXの推進が加速できることについてお伝えしました。
企業の導入状況の調査から「なんだ、他の会社もまだ導入していないのか・・・」と少しホッとしましたか?それとも、「早く導入しないと他社に後れを取ってしまう・・・」と思いましたか?
現状はどちらの考えもあるかと思います。ただ、自治体での導入がこの1年で急増したように、今後は企業での導入の動きが加速することは想像に難くありません。もう生成AIは「使うかどうか」ではなく、「どう使うか」を考えるフェーズにきていると思います。生成AIを業務変革のエンジンとして、皆さんの業務に積極的に活用してみてはいかがでしょうか。
今回は生成AIの活用についてお伝えしましたが、生成AIは導入にあたり、機密情報や誤情報、著作権など、さまざまなリスクへの対応も不可欠であり、技術活用とガバナンスの両立が成功の決め手となります。生成AIのリスク課題については、また次の機会にお伝えします。
エクシオグループではこれまでに培ってきたAI活用のノウハウや実績による企業様に寄り添った“伴走型”のサポートを行っています。生成AI導入にお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。
詳しいサポート内容等については以下の資料をご用意しました。よろしければ、ダウンロードしてご覧ください。
2025/10/01 | カテゴリ:AI
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