生成AIの進化とともに、多くの企業がその業務活用に乗り出しています。文章作成、アイデア出し、顧客対応の自動化、社内教育・・・など、その可能性は多岐にわたります。
しかし、ただ生成AIを導入しただけでは成果は出ません。業務に適した使い方を定着させ、「再現性のある成果」を生み出すには、「プロンプト」(指示文)の作成と共有が重要です。
本記事では、企業やチーム単位で生成AIを導入・活用する際に欠かせない「プロンプトの共有」について、そのメリット、実践ポイント、そして活用事例をご紹介します。生成AI活用を推進したい方にとって、現場で一歩踏み出すヒントとなれば幸いです。
生成AIにおける「プロンプト」とは、AIに対する指示文や命令文のことです。どのような出力が欲しいのかを伝えることで、AIの応答を制御します。生成AIは、この「プロンプト」をもとに、テキストや画像などのアウトプットを生成します。
ChatGPTなどの生成AIツールでは、プロンプト次第で、単なるアイデア出しから実務レベルの文書作成まで幅広い活用が可能です。特に組織で活用する際には、誰が使っても同じような結果が得られるようにプロンプトを作成・共有することが、業務効率化と品質向上のカギを握ります。
ChatGPTなどの一般的なツールでは、システムプロンプトのようなAIの根本設定には触れられませんが、プロンプト内でAIに“役割”を与える表現は有効です。たとえば以下のような書き方をします。
例:「あなたは人事部の教育担当です。新入社員向けに、コンプライアンスの基本を800文字以内でわかりやすく解説してください。堅すぎず、丁寧な口調でお願いします。」
このように「誰として話すか」「どんな立場か」「対象は誰か」などを明示することで、より的確な回答が得られます。
また、「表で出力してください」「結論から簡潔に書いてください」などの出力形式やトーンの指示も、業務での精度と再現性を高めるうえで欠かせません。
業務用プロンプトを作成する際は、以下の5つの観点を意識すると精度が上がります。
・目的(何を達成したいか)
・対象(誰に向けた出力か)
・文脈(背景や条件)
・出力形式(リスト、表、Markdown等)
・制約(字数、トーン、禁止語など)
このように構成されたプロンプトは、汎用性が高く、再利用にも適しています。
社内での具体的な活用例は様々ですが、例えば以下のような業務での生成AI利用は多いと思います。
・メール文面作成:営業・社内連絡文を目的に合わせ整った形に整える
・文章の要約:議事録など大量のテキストを簡潔にまとめる
・FAQの作成:製品マニュアルから、よくある質問とその回答を自動生成
・報告書・レポートの作成補助:月次報告書、営業報告、進捗報告など
・アンケート結果の要約・分析コメント:社員アンケートや顧客アンケートの自由記述の要約
これらの業務を安定して回すには、プロンプトの質はもちろんですが、特にこうした定型業務ではプロンプトをテンプレート化し、社内で共有する「プロンプトの共有」が効果的です。
プロンプトの作成と共有は、単なる個人利用に留まらず、組織全体の生産性向上やナレッジマネジメントにも直結します。それは良質なプロンプトを組織で標準化・共有することで、誰もが一定以上の成果を出せる仕組みを作ることが可能になるからです。
AI活用においては「プロンプト次第でアウトプットの質が大きく変わる」とよく言われますが、担当者ごとに個別のプロンプトを試行錯誤するのは非効率的です。
優れたプロンプトを社内で共有すれば、ノウハウが蓄積され、全体の業務品質が底上げされます。また、プロンプトの改善・洗練も組織的に進めやすくなります。
先ほど例にあげたような営業メールの作成や議事録要約、FAQ生成・・・など、定型業務ではプロンプトのパターン化が有効です。
これらの業務は「繰り返し発生する」、「一定の型やルールがある」、「担当者ごとの差が出やすい」、といった特徴があり、プロンプトを「テンプレート化」と「共有」することによって大きな効果が期待できます。
また、共有したプロンプトを利用することで、作業時間を大幅に短縮でき、生産性が上がることはもちろん、プロンプトを社内ナレッジとして蓄積すれば、「できる人だけが成果を出せる状態」から「誰でも一定の成果が出せる状態」へ変えることができます。つまり、AI活用の属人化の防止です。
知識や経験が浅いメンバーでも、良質なプロンプトを活用すれば、経験者並みのアウトプットを出すことができるようになります。特にOJTや新人教育の場面では、プロンプト共有が即戦力化を促進します。
実際のプロンプト活用・共有事例をご紹介します。
エクシオ・デジタルソリューションズ株式会社には自社で開発し、社内利用している生成AIプラットフォーム『Excellia』があります。Azure OpenAI Service を利用し、ChatGPTのAIモデルGPT-4.1 を採用しています。
ご参考記事:【生成 AI】Excellia を自社向けに提供開始 ~AIVolutionX からの進化と業務利用への本格展開~
『Excellia』が備える機能の一つに、ユーザーが一貫した指示を与えられる「ペルソナ」機能があります。この機能は、AIの性格や振る舞いを定義し、業務に即したアウトプットを得るための仕組みです。
例えば「あなたは経理部の主任です。社内報告書の形式で…」といった設定を保存して、皆で共有し使い回すことができます。
『Excellia』には、用途別・業務別にプロンプトを共有できる「プロンプトライブラリ」も搭載されています。これにより、他部門のベストプラクティスを簡単に取り入れることができ、全社的なDXを推進できます。
『Excellia』導入により、部門横断のワーキンググループでプロンプトの検証や改善を進めています。また、社内教育コンテンツや活用ガイドも整備し、新入社員でもスムーズに利用できる環境が整っています。
生成AI導入だけで終わらせないためには、プロンプトの共有や改善を日常的な業務の一部に組み込み、成功事例を積極的に展開しましょう。社内勉強会やナレッジ共有会なども有効です。
まずは小さな業務からプロンプトを作成・共有し、成果を確認しながら徐々に展開していくことが成功への近道です。
・まずは簡単なものからプロンプトのテンプレートを1つ作ってみる
・作ったプロンプトのテンプレートをチーム内で使ってフィードバックをもらう
・ナレッジ共有スペースにプロンプトのテンプレートをまとめておく
・他の人がプロンプトのテンプレートを再利用できるように整備する
生成AIは、正しく使えば業務効率化や人材育成に大きな力を発揮します。しかし、ツールそのものよりも、「どのように使うか」「どう社内で共有するか」が成否を分けます。
プロンプトは、ただの指示文ではなく、組織の知見やノウハウを言語化した「資産」です。属人化を防ぎ、全社的な価値へと昇華させる取り組みを、今こそ始めてみませんか?
エクシオ・デジタルソリューションズでは様々な生成AI活用機能を搭載した活用基盤を提供しています。業務特化のテンプレート共有をできる「プロンプトライブラリ」、役割を定義し回答の精度向上させる「ペルソナ」機能の搭載が可能です。生成AI導入と活用方法にお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。
詳しいサポート内容等については以下の資料をご用意しました。よろしければ、ダウンロードしてご覧ください。
2025/10/01 | カテゴリ:AI
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