現在、SD-WAN(Software Defined-Wide Area Network)は市場規模が147億円を超えており、今後も大幅な成長が予測されています。IDC(International Data Corporation)の報告によると、2028年には市場規模が251億円を超える見込みです。SD-WANを導入することで、WANの可視化や管理効率の向上など多くのメリットを享受できますが、ネットワークの入れ替えには長時間のシステム停止が必要となる場合もあり、ビジネスへの影響が懸念されます。そのため、慎重な判断が求められます。
今回は、SD-WANの導入と運用にかかる費用について解説し、従来のネットワーク運用との比較を行います。
新しいシステムの導入には、使用するためだけでなく、導入のための費用がかかります。SD-WANを導入する際には、初期費用として一定の金額が必要になることが多いですが、導入に必要な費用は既存システムの規模や構成、移行方法によって異なります。
・初期検討: SD-WANの実現可能性や課題を調査し、既存ネットワークの課題解決策を検討します。
・設計/構築: 最適な構成やパラメータを設計し、実際に構築します。必要なデータ収集や障害試験も行います。
・切り替え: 既存ネットワークから新ネットワークにトラフィックを移行します。一般的には、既存ネットワークがある環境内にSD-WANを導入し、段階的に移行します。
SD-WAN導入後の運用費用は継続的に発生します。まず、SD-WAN設備の利用費です。クラウドサービスを使う場合は月額費用がかかり、オンプレミスの場合はラックレンタル費や電気代が発生します。
次に、自社内での管理工数も重要です。問い合わせ対応、新規セグメントの払い出し、監視などのタスクがあります。これらは時間とともに減少する傾向があります。
さらに、運用担当者へのトレーニングも必要です。特に24時間稼働するインフラ部分では人員計画が大切です。SD-WAN技術は比較的新しいため、経験豊富な人材がまだそれほど多くはなく、初期段階ではトレーニング期間を長く取ることが重要です。また、障害時には通常以上の工数が必要となるため、余裕を持った予算設定が求められます。
SD-WANを導入すると、旧ネットワーク設備の維持費が不要になります。オフィスやデータセンターの機器を撤去すれば、ラックのレンタル費用もかかりません。大規模システムほどSD-WAN移行による維持費削減が大きくなります。
導入には事前検討の情報を基に設計・構築を行います。既存システムの利用で費用を抑えられ、柔軟なトラフィック制御が可能なため後からの変更もしやすく設計時間も短縮できます。
運用コストでは、ユーザ対応やトラブルシュートが挙げられます。SD-WANの特徴でもある集中管理により、リモートでの設定変更などが可能であるため一箇所で設定変更やトラブルシュートを行うことによる人的リソースや作業工数を削減できます。また、経年劣化した機器の交換や組織編成による設計変更も少ない工数で行えます。
SD-WANを利用することで管理を一元化し、複数回線を仮想的に統合することが可能となります。これにより、現行のネットワーク環境に応じた帯域幅の最適化が実現され、既存ネットワークの無駄な帯域を解約することでコスト削減が期待できます。また、回線の種類に関係なく、トラフィックの通信品質を安定させることが可能です。
現在、多くの企業がAWSやMicrosoft Azure、MS365などのクラウドサービスの利用を進めており、それが一般的な運用形態となっています。従来のネットワークアーキテクチャにおいては、すべての通信を管理下に置くため、各拠点からの通信は自社で管理するデータセンターを経由してインターネットへ接続する必要がありました。しかし、SD-WAN技術を導入することで、各拠点から直接インターネットへ接続する経路を構築しながらも、全体のトラフィックを一元的に管理することが可能です。その結果、データセンターで使用していた回線帯域の各拠点への割り当てや、時間帯に応じて必要な帯域をデータセンター側の特定のサービスに振り分けるなど、柔軟かつ効率的な運用が可能となります。このような運用モデルにより、回線利用に伴うコストの最小化が実現されます。
2025/02/19 | カテゴリ:IT基盤構築
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