「SD-WAN」導入の進め方とは?ポイントや注意点をご紹介

インターネットやPCの利用が当たり前になった現代では、コンピュータの効率的な利用環境の構築は業務の一環として重要です。
その中で、SD-WAN(Software Defined-Wide Area Network)が多拠点でも安定して利用できるネットワーク環境を構築する手段として注目されており、導入する企業も増えています。本記事では、SD-WANの導入によるメリットと、その導入方法のポイントについて説明します。

SD-WANについて

SD-WANは企業のWAN環境を改善し、インターネットサービスをより効率的に利用するための技術です。多くのユーザーが同時にインターネットを利用すると、帯域が混雑し、サービスの利用に影響が出ることがあります。SD-WANは、このような問題を防ぐためにネットワークを最適化し、既存の設備環境を維持しつつ、インターネット利用の改善を図ります。

SD-WANが求められる背景

近年、多くの企業でIT活用が進み、複数の拠点を有する企業ではインターネットサービスを活用したコミュニケーションが一般的になっています。インターネットの利用はデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に欠かせないものであり、クラウドサービスなど、インターネットが前提となるサービス利用が増えています。

しかし、クラウドサービスの普及やDXの推進により、既存のインターネット環境には負荷がかかりやすくなりました。特にWeb会議ツールなど、リアルタイムで音声や映像を扱うサービスの増加に伴い、インターネットの混雑が課題となっています。

SD-WANはこのような状況を改善し、インターネット利用時の遅延を回避するために注目されています。

SD-WAN導入のメリット

SD-WANの導入には多くのメリットがあり、様々な効果が期待できます。以下に順番に見てみましょう。

  1. 通信負担の改善


    SD-WAN導入の最大のメリットは通信負担の軽減です。SD-WANはデータセンターを介さないインターネットブレイクアウト技術を実現し、通信の一極集中を防ぎ、混雑を回避できます。クラウドサービスのパフォーマンスも向上する可能性があります。

    また、アプリごとに通信方式を設定できるため、それぞれのパフォーマンスに最適な運用が可能です。

  2. リモートでのデバイス設定や通信設定


    SD-WAN導入の二つ目のメリットは、ゼロタッチプロビジョニングの実現です。これは、拠点ごとのネットワーク機器設定がクラウドを介してリモートで行える技術です。

    従来のネットワーク機器では、専用端末を各拠点に配備する必要があり、ネットワーク担当者が現地へ出張してセットアップを行うことがあります。この場合、時間と費用がかかりますが、SD-WANの導入によりクラウド経由で対応できます。

    現場社員が電源をオンにするだけで、本社から設定を行え、設置したデバイスやネットワーク情報は管理者画面からリアルタイムで確認できるため、運用状況の把握やトラブルシューティングもリモートで対応可能です。

  3. コスト削減効果が期待できる


    SD-WANの導入は、回線運用コストの削減を促進します。本社と各拠点を安全に接続するためには、専用のセキュア回線が必要でしたが、この方法では通常の回線よりも高額な契約が求められました。

    しかし、SD-WANを導入することで、専用回線ではなく通常のインターネット回線で運用が可能となり、その分のコストを軽減できます。インターネットブレイクアウトの実現には新規回線の契約が必要ですが、既存回線を使い続ける場合や専用回線を契約する場合よりも安価に抑えることができます。

    また、従来の回線契約の場合にはネットワーク管理を個別にモニタリングする必要がありましたが、SD-WANの場合は一括で管理が可能です。クラウド経由の管理コンソールの運用により、一元管理を実現し、管理工数を削減してIT担当者の負担を軽減し、業務効率化や担当者の削減につながります。

  4. SD-WAN導入における注意点


    SD-WANの導入時には、トラブルが起きないよう事前確認が必要です。三つの注意点を解説します。

    1.導入のタイミング

    SD-WANの導入時には、ネットワーク環境のリセットが必要です。これにより一時的な業務停止が発生するため、移行のタイミングを慎重に選ぶ必要があります。24時間稼働の工場などでは特に注意が必要です。影響を最小限に抑えるための対策を検討し、移行時のベンダー選定や打ち合わせに予想以上の時間がかかる場合もあります。余裕のあるスケジュールを組み、コストを抑える仕組み作りが大切です。

    2.セキュリティ対策

    SD-WANを導入する際、専用回線の縮小や廃止が考えられますが、セキュリティが低下する場合は代替策を準備する必要があります。企業活動にはサイバーセキュリティ対策が重要ですので、セキュリティ要件を引き下げるのは避けるべきです。移行後も既存のセキュリティ対策を維持するか、新たなセキュリティツールの導入を検討しましょう。

    3.拠点数が少ない

    SD-WANは、複数拠点の専用回線コストや運用負担を削減する場合に効果的です。ただ、全ての企業が満足できるわけではなく、拠点が少ない企業ではコストが増えることもあります。初期費用がかかるので、効果を試算してから導入を判断しましょう。

SD-WAN導入の進め方

上記の注意点のほか、SD-WANの導入には、適切なプロセスを踏むことが重要です。順番に見ていきましょう。

  • 課題の洗い出し


    まずはネットワーク環境の問題点を把握しましょう。回線が逼迫している場合、新しい回線契約で解決できることがあります。そして、問題に最適なソリューションを選ぶことが重要です。システム強化や新回線契約でも速度やサービス利用が不十分なら、SD-WAN導入を検討してください。

  • ソリューションやベンダー選定


    SD-WANの導入準備が整ったら、次のステップはベンダーのサービス選定です。SD-WAN製品にはいくつかの種類があり、WANの問題解決に特化したサービスや、データセンター事業者向けのSD-LANを基盤としたサービスなどがあります。

    各ベンダーは異なる製品を提供しており、サービス提供形式や強みにも違いがあります。例えば、サブスクリプション形式を重視するベンダー、WAN高速化に注力するベンダー、オールラウンドなサービスを提供するベンダーなどです。

    自社の課題に適したソリューションを見つけるために、業務打ち合わせを通じて慎重に選定してください。

  • 機器の設置や工事


    SD-WANの導入には機器の設置などの工事が伴います。サービスはクラウド経由で提供されますが、実装までに時間がかかる点を考慮する必要があります。

SD-WAN導入の成功ポイント

 SD-WANの導入には以下のような、押さえておきたい成功のポイントが二つあります。

  • 会社の規模に合ったツール選定


    会社の規模に適したツールを選ぶことで、導入効果が最大化され、コストも最小限に抑えられます。

  • 拠点ごとの適切なセキュリティ環境の構築


    拠点ごとにセキュリティ対策を行い、SD-WAN導入によるリスクを回避しましょう。ファイアウォールの構築や、セキュリティ対策に力を入れた製品の利用を検討してください。
    自社システムとの相性を確認しながら、実装を進めましょう。

まとめ

SD-WANは、複数拠点を持つ企業にとって有用な技術です。インターネットやクラウドサービスの拡大に伴い、通信回線の改善技術の重要性が高まっています。今後のデジタルトランスフォーメーションによって、通信環境への負荷が増える可能性があります。そのため、早期の対策が求められます。

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2025/02/19 | カテゴリ:IT基盤構築

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