SD-WANのメリットとは?VPNの課題とマルチクラウド導入のポイント

SD-WAN (Software Defined-Wide Area Network)は、企業ネットワークの運用効率化や通信品質の向上を実現する技術として注目されています。特にクラウドサービスの利用が拡大するなかで、従来のVPN環境では対応しきれない課題を解決する手段として導入が進んでいます。 
また、複数のクラウドサービスを組み合わせるマルチクラウドも、自社に最適なIT環境を構築する方法として普及しています。 
本記事では、SD-WANのメリットやVPNの課題、マルチクラウド導入が推奨される理由、導入時に押さえるべきポイントについて解説します。 


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SD-WANとは?

SD-WANとは、複数のネットワーク機器で構成されたWANに仮想ネットワークを構築し、ソフトウェアによって管理する技術を指します。従来のWANは、ルーター、スイッチ、ロードバランサーなど、複数の機器を用いて拠点間を接続するネットワークです。しかし、設定作業や機器リソースの負担が大きく、複数の拠点を持つ企業にとって使い勝手の面で課題がありました。しかしSD-WANであれば、こうしたネットワークの管理負荷の軽減が可能になります。

  • SD-WANのメリット


    以下の4点がSD-WANを利用する主なメリットです。

    ・設定作業の負担軽減
    ・異なる複数回線の使い分け
    ・管理工数の削減
    ・快適な通信環境の構築

  • 設定作業の負担軽減


    SD-WANは、ゼロタッチプロビジョニングにより自動で機器とネットワークの接続設定が可能です。これは、事前に設定されたプロファイルを基にネットワーク機器が自動的に設定を行う仕組みで、これにより設定を遠隔操作で行うため、現地作業は最小限に抑えられます。

  • 異なる複数回線の使い分け


    SD-WANは、アプリケーションの重要度に応じて異なる回線を使い分けられます。例えば、機密性の高いデータを扱うアプリケーションには、専用の高セキュリティ回線を使用し、一般的なデータを扱うアプリケーションには、コストの低いインターネット回線を使用することができ、情報漏洩リスクの低減、コストパフォーマンス向上が可能です。

  • 管理工数の削減


    SD-WANは、ネットワーク全体のトラフィックをリアルタイムで監視し、各拠点やアプリケーションごとの通信量を可視化でき、どの拠点やアプリケーションがどれだけの帯域を使用しているかが一目でわかり、無駄なコストの発生を防ぐことができます。 また、異常発生時にも迅速な原因特定と対応が可能になり、ネットワークのダウンタイムを最小限に抑えることができます。

  • 快適な通信環境の構築


    通常、クラウドサービスやインターネットへのアクセスにはゲートウェイ経由が必要ですが、SD-WANを利用すると各拠点から直接インターネットブレイクアウトによるアクセスが可能になり、トラフィック分散と安定した通信が可能です。

VPN(従来のネットワーク)の課題

多くの企業が利用しているVPNには、以下の4つの課題があります。 

・通信経路の迂回が発生
・トラフィック量の増加による影響
・ネットワークインフラ構築に伴うコストの増大
・セキュリティリスクの増大

元来、VPNは機器リソースの消費量が多く、トラフィック量の増加に応じて通信速度が低下しやすいという性質があります。また、VPNゲートウェイを通過する際、異常検知システムが導入されていない場合、情報漏洩のリスクが高まる可能性があります。

  • 通信経路の迂回が発生


    サーバーへのアクセス時には、必ずVPNゲートウェイを経由する必要があります。VPNは拠点間を接続するネットワーク環境を意味するため、VPNゲートウェイは通常一箇所に設置されます。
    パブリッククラウドやデータセンターが複数存在する場合、複数のネットワークを経由してアクセスすることになり、ユーザー、VPNゲートウェイ、およびサーバー間の物理的距離が大きい場合は通信速度の低下や通信障害が生じる可能性があります。

  • トラフィック量の増加による影響


    トラフィック量の増加は、多くの人々が直面している課題です。VPNでは情報漏洩防止のため、ファイアウォールやWAFなどの複数のセキュリティツールを導入しています。
    不正アクセスやサイバー攻撃の有無を常時チェックしており、サーバーへの負荷が高くなることがあります。また、自宅で作業する方が増加したことで、通信障害や通信速度の低下が発生しやすくなっています。

  • ネットワークインフラ構築に伴うコストの増大


    VPNは他の回線と比べて低コストで利用することができますが、セキュリティ面や運用面を考慮するとコストが上がる傾向があります。
    VPNデバイスはリソースを多く消費するため、トラフィック量が増加すると通信速度の低下や通信障害が発生する可能性が高まります。キャパシティを増やすためにはリプレースが必要であり、多くの時間と費用がかかります。また、情報漏洩防止のためには強固なセキュリティ環境の構築が必要であり、複数のツール導入には多額の資金が必要です。

  • セキュリティリスクの増大


    VPNの課題には、セキュリティへの不安があります。VPNは「外部からのアクセスは危険、内部からのアクセスは安全」という境界型セキュリティモデルを使用しています。

    DDoS攻撃や脆弱性攻撃を防ぐために、IPS/IDS、ファイアウォール、WAFなどが設置されていますが、一度認定されたアクセスは再認証されることはほとんどありません。

    そのため、VPNゲートウェイを通過すると社内システムに簡単に侵入できる可能性があり、企業はファイルレスマルウェアの被害を受けやすくなります。このマルウェアはウイルスソフトやファイアウォールに検知されにくい特徴があります。また、従業員の社外アクセスを認定するために、VPNゲートウェイは常に開放されており、それによって不正アクセスやサイバー攻撃のリスクが高まります。

マルチクラウド導入が推奨される理由

マルチクラウドは、複数のクラウドサービスを統合し、自社に最適な運用環境を追求する手法です。以下の三点が、マルチクラウド導入の重要視される要因です。

・BCPの確保
・ベンダーロックインの回避
・カスタマイズ性の向上

それぞれについて解説します。


  • ・BCPの確保

    システム過負荷、サイバー攻撃、自然災害などによるシステムダウンへの備えとして、強固なバックアップ体制を構築可能です。オンラインストレージやBIAツールを活用して、迅速な事業復旧を実現します。BCPの確保により、取引先や顧客からの信頼度が向上し、市場シェア、購入単価、リピート率の増加が期待できます。

    ・ベンダーロックインの回避

    マルチクラウドの導入により、特定のベンダーに依存しない環境を実現できます。ベンダーロックインとは、特定のクラウドサービス提供者へ過度に依存し、他社への移行が困難になる状態を指します。

    マルチクラウド環境下では、複数のサービスを併用することで、特定のベンダーへの依存を減少させ、柔軟かつコストパフォーマンスに優れたサービス利用が可能となります。また、ベンダーの経営悪化や倒産時にも、代替サービスへの迅速な切り替えが容易になります。

    ・カスタマイズ性の向上

    マルチクラウドを導入することで、自社のニーズに応じた高度なカスタマイズが可能となります。

    例えば、パブリッククラウドのAWSとMicrosoft Dynamics 365を同時に利用することができます。また、プライベートクラウドで自社の既存システムを維持しながら、パブリッククラウドのサービスを併用する形態も選択できます。このように、ベンダーの制約に縛られることなく、自社が望む最適な形態を追求することができます。

    結果として、クラウドサービスの機能性および利便性を最大限に引き出し、自社に多大な利益をもたらすことが可能です。

マルチクラウド導入のポイント

マルチクラウド導入のポイントは、以下の3点です。

・セキュリティベンダーの選択
・IT人材の確保
・複数契約に伴うコストの管理

それぞれのポイントをみていきましょう。

  • セキュリティベンダーの選択


    マルチクラウドを導入する場合、セキュリティレベルが同じ水準のベンダーを選ぶことが重要です。たとえば、セキュリティレベルが低いサービスを利用すると、サイバー攻撃のリスクが高まります。機密情報を保護するためには、自主管理を徹底する必要があります。ベンダーが強固なセキュリティ対策を講じる目的は、安定してサービスを稼働させるためです。また、多くのユーザーに安心感を提供するためでもあります。

    しかし、クラウドサービスやアプリで利用するアカウント情報は厳重に管理する必要があります。マルチクラウドやSD-WAN導入に限らず、情報漏洩を防ぐための対策が求められます。

  • IT人材の確保


    マルチクラウドの導入には、優れたスキルを持つIT人材の確保が不可欠です。マルチクラウドは複数のクラウドサービス・環境を併用するため、シングルクラウドと比べて運用や管理が複雑になります。

    また、セキュリティ関連の知識も必要となり、人材獲得の難易度が上がります。現在、数十万人のIT人材が不足している状況を考慮すると、市場での人材獲得は困難です。自社で人材育成を行う場合でも、多くの時間を要します。さらに、SD-WANの運用経験者が少ないため、長期的な視点で取り組む必要があります。

  • 複数契約に伴うコストの管理


    マルチクラウドは複数のサービスを併用するため、コストの管理が重要です。コストパフォーマンスが悪いサービスが見つかった場合、別のベンダーを探す必要があります。

    また、自社にとってマルチクラウドの導入が必要かどうか慎重に検討することが推奨されます。業務で利用するアプリやクラウドサービスを増やしすぎると、コストが増大します。さらに、利用頻度が低いサービスにも継続的に使用料金を支払わなければならない場合があります。

まとめ

SD-WANは、ネットワークの可視化や運用負荷の軽減、通信品質の向上を実現できる技術として注目されています。特にクラウド利用が拡大する企業においては、VPN中心のネットワークが抱える課題の解決策として有効です。 

また、マルチクラウドを活用することで、BCP対策の強化やベンダーロックインの回避、自社要件に合わせた柔軟なシステム構成が可能になります。 

ただし、マルチクラウド環境の運用にはセキュリティ対策や人材確保、コスト管理が欠かせません。自社に適したネットワーク・クラウド戦略を検討しながら、SD-WANとマルチクラウドの活用を進めることが重要です。

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2026/08/31 | カテゴリ:IT基盤構築

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