テレワークの増加や複数拠点からのクラウドサービス利用に伴い、通信品質の低下や管理コストに悩む企業が増えています。そんな変化するネットワーク環境の課題を解決する手段として注目されているのが「SD-WAN」です。
SD-WANという言葉を耳にしたことはあるけれど、具体的な意味やメリットがよくわからないという方も多いでしょう。この記事では、SD-WANの仕組みやメリット、注意点についてわかりやすく解説します。
まずは、SD-WANの定義や仕組みを簡単に説明します。そもそもSD-WANとは何かを理解していない方は、ここから基礎知識を学んでいきましょう。
SD-WANとは、「Software-defined Wide Area Network」の略称で、ネットワーク上で仮想のWANを構築して管理する技術です。通常、企業の各拠点からVPN接続をする際には、拠点ごとのVPNルータを設定する必要がありますが、SD-WANを導入することで、ソフトウェアを用いた仮想ネットワークで一元管理できます。
SD-WANは、サーバーの仮想化と似た仕組みを持ちます。ネットワーク機器の上にソフトウェアを用いて仮想化を行い、ポリシーの設定も柔軟に適用可能です。さらに、WANの使用方法からトラフィックの流れをカスタマイズし、インターネット接続の経路を自社のニーズに合わせて設定できます。
VPN(Virtual Private Network)は、インターネット上に仮想の専用線を構築し、利用者を限定できる専用ネットワークです。SD-WANは、仮想化技術を活用してソフトウェアを制御できるため、複数回線の組み合わせによって費用を抑えることが可能です。
SDN(Software-defined Networking)は、仮想的なネットワークを表す言葉で、VPNもその一部に分類されますが、SD-WANはSDNの課題を解消するために発展した技術です。SDNは主に社内LANで使用されるため、拠点間のネットワークにはVPNが必要ですが、SD-WANはその点を改善しています。
SD-WANの導入で使用できる機能と実現できることを以下の5種類に分けて解説します。
SD-WANを利用すると、インターネットブレイクアウトが可能です。これは、インターネット接続の通信を他の通信とは異なる経路に振り分ける機能で、基幹システムへの負荷を軽減し、トラフィックの効率的な管理を実現します。
ゼロタッチプロビジョニングは、機器に触れずに各拠点にシステムを導入できる仕組みです。ネットワーク機器がWANに接続されていれば、リモートでの設定変更も可能です。
SD-WANでは、アプリケーション識別エンジンが搭載されており、通信しているアプリケーションごとの通信量を詳細に把握できます。また、不審な通信がある場合には素早く対応が可能です。
マルチテナントは、1つのSD-WANインフラを複数のユーザーや組織が共有して利用できる機能です。1つのSD-WANを複数の論理的なWANに分割できるため、効率的なリソース利用、コスト削減が実現できます。
リンクステアリング機能は、SD-WANの重要な機能の一つであり、ネットワークトラフィックを最適なパスに動的に振り分けることを指します。これにより、ネットワークのパフォーマンスや可用性を向上させることができます。
SD-WAN導入の主な5つのメリットについて解説していきます。
SD-WANを導入すれば、ネットワーク設定や管理が簡素化されます。いままで現地で各拠点のネットワーク機器に設定を行う必要がありましたが、ゼロタッチプロビジョニング機能により、現地作業が不要になります。
SD-WANによって、一元管理が可能となり、運用・管理の負担とコストが削減されます。
また、ネットワークのトラブルや不具合を1箇所で管理できるため、インシデントへも迅速に対応できるメリットがあります。
SD-WANを導入すれば、ネットワーク回線の可視化と設定が可能となり、ビジネスの変化にあわせて柔軟に対応できます。
インターネットブレイクアウト機能を活用することで、例えばリモートワークなど、インターネットへのアクセスする拠点が増加した場合に、ネットワークの負荷を軽減し、拠点間のネットワークトラフィックの課題を解消します。
SD-WANでは、オープンとクローズのネットワークを自動で制御しながら併用し、トラフィックを抑え、安定した通信環境を提供できます。
SD-WANの導入や運用には注意も必要です。ここでは、その注意点を解説していきます。
SD-WANを導入する際、運用管理できる社員がいない場合は注意が必要です。基本設定や構築は比較的簡単ですが、運用には幅広い知識も必要です。
運用管理のできるネットワークエンジニアの確保についての検討もしておきましょう。
クラウドサービスとして提供されているコンポーネントを利用することが多いSD-WANでは、クラウドサービスのアップデートに対応する手間やアップデート後の自社ネットワーク環境への影響についても注意が必要です。
ここではSD-WANの活用で効果が期待できる、おすすめの企業について紹介していきます。
テレワークを推進している企業にとって、SD-WANの導入はおすすめです。 通常のWANでは、テレワークによる様々な場所からのインターネット接続を想定しておらず、通信量増加からネットワークが不安定になる可能性が高まります。
SD-WANを導入すればSaaSの利用など、アプリケーションに応じた接続先の変更を自動で行うインターネットブレイクアウトを実現できるため、安定したネットワーク利用が可能になります。
拠点が多く遠隔でネットワーク設定を一元管理したい企業にもSD-WANは適しています。
通常、ネットワークの構築は、現地で機器設定作業をする必要があるなど移動の手間やコストがかかります。
SD-WANであればゼロタッチプロビジョニング機能でこうした手間やコストを削減できます。
SD-WANは、ネットワークを可視化・一元管理できるシステムです。
導入することにより複数の機能が効果を発揮し、ネットワーク設定や管理の簡素化や、運用・管理コストの削減が可能になります。また快適なネットワーク環境の整備をしたい企業にとってもメリットの多いシステムとなるでしょう。
2025/02/19 | カテゴリ:IT基盤構築
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