
ニュースやビジネス誌で「生成AI」という言葉を見ない日はありません。営業提案や問い合わせ対応、経営戦略の支援など、AI活用の幅は急速に広がる一方で、「自社にはまだ早いのでは……」と感じている方も少なくありません。新しい技術への慎重な姿勢は、企業を守るために大切な考え方である一方で、生成AIについて「まだ関係ない」と受け止めたままでいることは、実は見過ごせないリスクになりつつあります。
本記事では「生成AIに関心はあるけれど、まず何をすればいい?」とお悩みの方に向けて、AI導入の最新動向と、無理なく第一歩を踏み出すためのヒントをお伝えします。
海外はもちろん、国内の企業でも「生成AI前提の業務再設計」が進んでいます。総務省の「情報通信白書」によると、世界の生成AI市場は2025年から2030年のわずか5年間で約6倍にも成長すると予想されています。この数字からも、業務プロセスや意思決定の進め方が大きく変わり始めていることがうかがえます。
昨今、MicrosoftやGoogleなどの巨大テック企業では、人員削減とあわせてAI分野への投資強化や組織再編が進められています。世界を牽引する企業では、AI活用を前提とした体制づくりが着実に進行しています。生成AIを取り入れることで、業務の自動化・判断支援・知識共有が同時に進み、人間の判断スピードと品質を大きく底上げできます。
例えば、議事録を瞬時に整理し、次のアクションリストまで提示することで、会議終了と同時に業務を次へと進めることが可能になります。このように生成AIの支援により、人は企画・判断・改善といった価値の高い業務に集中することができます。
単なる効率化にとどまらず「どのように働き、どう価値を生み出すか」といった、仕事の流れそのものが組み替わりつつあります。もし、こうした変化に対応しない場合、作業量が減らないまま意思決定のサイクルも改善されないため、コストやスピードの面で、競合との間に大きな差が生じるおそれがあります。

図1:世界のAI市場規模(売上高)の推移及び予測
出典:総務省|令和7年版 情報通信白書|市場概況
生成AIは、以下のように、すでにさまざまな業務領域で成果を上げています。
全社業務:パナソニック コネクト株式会社
AIアシスタントの活用により全社業務の効率化を進め、年間約18.6万時間相当の業務時間削減効果を創出しています。
自治体業務:横須賀市
ChatGPTによる文書案作成や要約・校正などを通じて、市全体として年間およそ22,700時間の業務時間削減効果を算出しています。
クリエイティブ業務:株式会社サイバーエージェント
生成AIを活用し、広告制作の効率を従来比で5倍以上に向上させています。
出典:
ー パナソニック コネクト株式会社 公式プレスリリース 2024年6月
ー 横須賀市 ChatGPT実証実験 結果報告書 p.51
ー 株式会社サイバーエージェント 公式サイト
生成AI時代に問われるのは、AIをどう使いこなし、どのような価値を創出できるかです。AIが作業を担うことで、私たちはより人間らしい戦略的な思考やイノベーションに時間を割けるようになっています。
生成AIは「人の代わりになる存在」ではなく、24時間稼働する「疲れ知らずの同僚」のように、業務の質やスピードを高める「第二の思考パートナー」として、活用の幅が広がりつつあります。
つまり、「仕事が奪われる」のではなく、「仕事の中身が変わる」という表現が適切です。この転換点において、AIを恐れるのではなく「使いこなすスキル」を磨くことが、企業の競争力を左右する要素の一つになります。
「もう少し様子を見てから……」そう思って生成AI活用の決断を先送りにしている間に、見えないところで「格差」は広がりつつあります。
AIを使えば、情報処理や資料作成、分析などにかかる時間を大幅に削減できます。MITの研究者による実験では、マーケター、コンサルタント、データアナリストなど、幅広いホワイトカラーの専門家444名を対象に、プレスリリースや短いレポート、分析計画の作成といった実務に近いタスクを実施させました。無作為に選ばれた参加者のうち半数に生成AI(ChatGPT)の使用を指示したところ、作業時間が短縮され、かつアウトプット品質も向上したという結果が確認されました。

図2:生成AIの使用による生産性の向上
出典:内閣府 令和5年第9回経済財政諮問会議資料(生成AIの使用による生産性の向上)
生成AIを使う企業ほど生産性が高まり、使わない企業ほど時間とコストに追われるという「生産性ギャップ」は、時間が経てば経つほど、複利のように大きく開いていく可能性があります。
AIを使いこなすには「プロンプト設計力」や「データ理解力」といったスキルが必要です。これらは一朝一夕で身につくものではありません。
早くからAIに触れている組織は、市場動向をすぐに取り込み、商品開発や営業戦略に反映できます。一方、そうでない組織は、いざAIを使おうとしてもノウハウがなく、どうしても後手に回ってしまいます。「ツールの差」以上に「AIリテラシーの差」が、企業の競争力に直結します。
関連記事:生成AI活用のカギは「プロンプト」にあり|組織で成果を出すための作成方法と共有のススメ
生成AIの急速な普及による変化を「まだ関係ない」と見過ごすことこそが、重要な経営リスクとなる可能性があります。AI活用が当たり前になりつつあるなかで対応が遅れると、人材流出や意思決定の遅れなど、複数の課題が重なりやすくなります。その積み重ねが競争力の低下につながり、市場での立ち位置が弱まってしまう可能性もあります。
AIの出力する情報に誤り(ハルシネーション)が含まれる可能性や情報漏洩、著作権侵害といったリスクは確かに存在します。しかし、それらを理由に導入を避け続けていると、時代の流れから取り残されてしまう懸念もあります。変化に気づき、適応しようとする姿勢こそが、企業の成長にとって重要な視点の一つです。
生成AIの活用において、最初から完璧を目指す必要はありません。大切なのは、まず「触ってみる」ことです。
「AI導入」と聞くと、大規模なシステム開発をイメージされるかもしれませんが、まずはチャット画面で会話することからで十分です。
実際に触ってみると、「思ったより簡単に使える」「こういう業務にも応用できそう」といったポジティブな気づきが得られます。この「体験」こそが、活用への心理的なハードルを下げてくれます。
いきなり大規模・複雑な導入から始めるのではなく、社内の機密情報を扱わない範囲で、短時間・低リスクで活用できる領域から生成AIを試してみることが大切です。
例えば「資料の骨子作成」「問い合わせメールの下書き」「提案資料の初案」など、定型的な事務作業への活用がおすすめです。「時間を短縮できた」「出だしがスムーズになった」という小さな成功体験を積み重ねることで、全社的な活用へとつなげられます。
自社だけで生成AI活用を進めようとすると、環境整備や運用設計、データの扱い方など、多くの検討事項が発生します。専門知識が求められる場面もあり、どこから手をつけるべきか迷ってしまうことも少なくありません。
エクシオ・デジタルソリューションズ(以下、EDS)は、こうした課題に寄り添いながら、企業の生成AI導入を「伴走型」で支援しています。Microsoftソリューションパートナーとしての知見や、Azure OpenAIを活用した基盤支援実績をもとに、企業が安心して第一歩を踏み出せる環境づくりが可能です。
また、導入検討時には無償の簡易検証(PoC)を実施しています。お客様のユースケースが生成AIでどこまで実現できるのか、EDS社内環境で検証した結果をレポートとして提示するため、次のステップを検討しやすくなります。
生成AI活用の最初のステップとしてお役立ていただければ幸いです。

図3:エクシオ・デジタルソリューションズの簡易検証実施概要
生成AI活用において重要なのは、「いつかやる」を「今、少しだけやってみる」に変えることです。
実際に生成AIを体験し、現場の反応を見ながら少しずつ活用の幅を広げていくことで、課題や成功パターンを把握できます。生成AIは、業務を静かに支え続ける「頼れる同僚」のような存在として、日々の仕事に少しずつ浸透していきます。こうした経験の積み重ねが、やがて来る「AI前提社会」において大きな強みになります。
まずは「触って理解する」ところから、無理のない形で取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。
2025/12/26 | カテゴリ:AI
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