ChatGPTをはじめとする生成AIは、業務効率化やコスト削減、ひいてはDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の切り札として、注目を集めています。
しかし一方で、「セキュリティが心配」「どこまで安全に使えるのか」といった懸念から、導入に踏み切れない企業も少なくありません。
本記事では、企業への積極的な生成AI活用や安全な生成AI導入に最適なAzure OpenAI Serviceについてお伝えします。
既にご存じの方や使ったことがある方も多いと思いますが、生成AI(Generative AI)は、テキスト、画像、音声、動画などのコンテンツを自動生成するAI技術の総称のことです。
膨大なデータを学習した大規模言語モデル(LLM :Large Language Models)と呼ばれる、文章の理解や生成を人間と同等レベルで行うことができるAIモデルを基盤とし、ユーザーが自然な言葉で指示するだけで文章や画像など、多彩な出力が可能になります。
代表的なものにOpenAIのChatGPTなどがあり、ビジネス現場でも、問い合わせ対応の自動化、社内ドキュメントの生成、データ分析レポートの作成など、幅広い活用が進んでいます。
企業における生成AIの導入は、社員の業務負荷軽減や作業の効率化が期待できます。特に「社内データ×生成AI」を活用することで、これまで属人化していた業務の自動化・標準化が可能となり、業務の質とスピードが格段に向上することは以前のコラムでもお伝えした通りです。
ご参考記事:「社内データ×生成AIで実現する業務DX|企業や自治体での活用事例を紹介」
一方で、セキュリティやプライバシーへの懸念、社内データとの安全な連携方法、運用管理のノウハウ不足など、さまざまな課題も浮き彫りになっています。
特に「自社の機密データが外部に流出しないか」という不安は、導入を慎重にする理由の一つにもなっています。
生成AIを導入しようと考える際、まず思い浮かぶのは「とりあえず通常のChatGPT(※)を試してみようか」ではないでしょうか?
確かに、すでに趣味や日常の中で多くの人に利用され、誰でもすぐに使え便利なChatGPTですが、業務での本格利用となると、懸念されるリスクがあります。
※:OpenAIがWebサービスで提供する無料版など
通常のChatGPTはクラウド上で動作しており、入力された情報はインターネット経由で外部サーバーに送信されます。そのため、社内の機密情報や個人情報を入力した場合には、意図せず外部に漏洩するリスクを完全に排除することはできません。実際に、韓国の大手テクノロジー企業において、社員がChatGPTに社内データを入力した結果、情報漏洩が生じ問題となりました。この事例では、会社内部でのChatGPTの利用が全面禁止されるという措置に至りました。
社員が個人の判断で生成AIを業務に使い始めると、会社が把握していない形で情報が外部に出ていくことになります。これは「シャドーIT」と呼ばれ、管理不能なリスクを生みます。
通常のChatGPTを業務で利用する際のリスクがわかったところで、それでは生成AIを業務で安全に使うにはどうすれば良いのでしょうか?
こうしたリスクにもしっかり対応できるサービスがAzure OpenAI Serviceです。どちらもOpenAIの技術をベースとしたものですが、まずAzure OpenAI Serviceがどんなサービスなのかについて解説します。
Azure OpenAI Serviceは、Microsoft Azureのクラウド環境上でOpenAIの各種生成AIモデルを利用できるサービスで、ChatGPTの利用もできます。企業向けのサービスであるため、セキュリティ機能や運用管理機能が充実しており、ChatGPTと同等の性能を持ち生成AIを自社データと安全に連携して活用することができます。
Azure OpenAI Serviceは、企業向けのセキュリティ基準に則り、データの保存先やアクセス管理を厳格にコントロールできます。
また、インターネットに公開しない「閉域ネットワーク接続」も可能になり、ユーザーが入力したデータについてはAzure上にとどまることで、OpenAI本体の学習データとして再利用されることもなく、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることができます。加えて、アクセス権限の細かな設定や監査ログの取得など、企業が求めるガバナンス機能も標準で備えています。
それでは次に、Azure OpenAI Serviceを企業へ導入することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
Microsoft Azureの堅牢なセキュリティ基盤を活用できるため、社内データを安心して連携できます。また、各種コンプライアンス要件(例:GDPR、ISMSなど)への対応も容易です。
APIを通じて社内システムやアプリケーションに組み込むことで、生成AI機能の実装が可能です。これにより、社内のFAQデータをもとにした自動応答システムの構築や、社内文書検索を効率化することができます。
ファインチューニングと呼ばれるプロセスで、生成AIモデルをカスタマイズできることができます。特定のタスクや要件に合わせ生成AIモデルを最適化させることで、より高品質な結果を得ることが期待できます。
Azure OpenAI ServiceではSLAが定められており99.9%を超える高い稼働率を保証しています。こうした高い稼働率と信頼性が担保されていることで、高いパフォーマンスが期待できます。
項目 | Azure OpenAI Service | 通常のChatGPT(Web版など) |
---|---|---|
提供元 |
Microsoft社(Azure上で提供) |
OpenAI社 |
利用方法 |
API、アプリへの組込み |
Webブラウザ、API、SaaS |
接続方法 |
・インターネット |
インターネット |
データの扱い |
入力データは学習に使用されない |
入力データが学習に使用される可能性がある※ |
カスタマイズ性 |
企業向けに高度なカスタマイズが可能(ファインチューニングなど) |
一部可能(カスタムGPTなど) |
SLA |
99.9%以上の稼働率 |
なし |
その他 |
・すぐには利用できない。 |
・登録後すぐに利用できる。 |
ここでは、Azure OpenAI Serviceの活用事例をご紹介します。社内データと生成AIの連携が可能になることにより、業務の効率化と高品質化による業務DXを実現させています。
ある大手メーカーA社では、Azure OpenAIを活用して社内の定型問い合わせ対応を自動化しました。従来は1日あたり数百件程度の問い合わせを人手で対応していましたが、AI導入後は約8割を自動応答に移行することができ、担当者の負担が大幅に軽減されました。
IT企業B社では、社内FAQデータとAzure OpenAI Serviceを連携させ、社内ポータルにAIチャットボットを実装しました。社員が疑問点を入力するだけで、過去のナレッジやマニュアルから最適な回答を即時に提示できるようになりました。
金融業C社では、Azure OpenAI Serviceを使った自動レポート作成システムを構築しました。経理や監査業務で発生する大量の報告書をAIが自動生成することで、作業時間を従来の半分以下に短縮し、業務品質も向上しました。
今回は企業への生成AI導入に適したAzure OpenAI Serviceについてお伝えしました。生成AIの業務利用を検討する際、通常のChatGPTだけでは解決できない課題が多く存在します。情報漏洩のリスク、ガバナンス対応の難しさ、カスタマイズ性の限界・・・それらをクリアにする解決策として極めて有力な選択肢となるAzure OpenAI Serviceはの導入を具体的に検討してみてはいかがでしょうか?
通常のChatGPTなどとは違いAzure OpenAI Serviceはによる生成AI導入は、Azure環境の構築やセキュリティ設定、ネットワーク構成など、クラウドの知識や社内システムやアプリケーションとの連携など開発が必要なこともあるため、企業によっては導入ハードルが高いと感じる場合もあるでしょう。
エクシオ・デジタルソリューションズはMicrosoft社のパートナーであり、これまでに培ってきたAI活用のノウハウや実績で、企業様に寄り添った“伴走型”のサポートを行っています。生成AI導入にお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。
詳しいサポート内容等については以下の資料をご用意しました。よろしければ、ダウンロードしてご覧ください。
2025/10/01 | カテゴリ:AI
© EXEO Digital Solutions, Inc. All Rights Reserved.