昨今、非エンジニアが開発支援ツール等を活用して業務用アプリを開発する「市民開発」が広がってきています。市民開発には開発コスト削減や開発期間の縮小等のメリットがありますが、デメリットはないのか気になる方もおられるでしょう。本記事では市民開発のメリットのほか、導入時に行うべき点、役立つ支援ツールについて紹介しますので、関心をお持ちの担当者の方は参考にしてください。
「市民開発」とは、非エンジニアが開発支援ツールを活用して業務用アプリケーションを開発することを指します。非エンジニアでプログラミング経験がない人でも、プログラミングが不要な「ノーコードツール」あるいは少量のプログラミングで済む「ローコードツール」を活用することで、業務効率化や業務プロセスの自動化を実現できます。
現在、DXの推進に伴い、システム開発の必要性が高まっています。しかし、多くの企業が「予算不足で外注が難しい」「IT人材不足で社内開発も困難」という板挟みの状況に直面しています。
そこで、プログラミングの知識をほとんど必要としない市民開発が注目され、コストを抑えながら社内で開発を進める企業が増えています。さらに、外注よりも開発スピードが速いことも、市民開発が選ばれる大きな理由のひとつです。
システム開発を行う際、外注をするとコストは高くなります。社内のエンジニアが開発を行う場合でも、専門的な技術を持つ人材のため、人件費が増大しがちです。
ノーコードやローコードのツールを活用した市民開発であれば、社内の一般社員でもシステム開発が可能です。エンジニアに一から開発してもらうのに比べて機能の自由度は下がりますが、開発にかかる人件費を削減できます。
システム開発の主な手順は、(1)要件定義、(2)設計、(3)開発、(4)テスト、(5)リリース、(6)保守です。外注をする場合、これらの手順に加え、要件定義時に現場でのヒアリング、設計時に現場への確認、テスト時に現場からのフィードバック、保守時に現場との情報共有、等のステップが追加で発生します。現場の社員が開発を行う市民開発では、これら現場への確認のステップを削減できるため、業務の効率化にもつながります。
システム開発を外注すると、要件定義の認識合わせやコミュニケーションに時間がかかるうえ、現場のニーズを外注先に理解してもらう必要があるため、認識の齟齬による手戻りが発生しやすいという課題があります。
一方、現場の担当者が開発を行えば、細部までニーズに合ったシステムを作りやすく、時間のロスを防げます。さらに、ノーコードやローコードの開発支援ツールを活用すれば、開発期間の短縮につながり、現場や市場の変化に迅速に対応できるというメリットもあります。
システム開発のナレッジが社内に蓄積し、DX人材を育てることにつながります。実際に社内で動くシステムを開発することで、実務的なスキルを獲得でき、個人のスキルアップが可能です。
外注した場合、ナレッジの蓄積は難しく、次回以降の開発につなげることも困難です。現場の社員に開発から携わる機会を与えることで、会社にとって重要なリソース作りにもつながります。
システムはリリースして終わりではなく、その後の保守運用が重要です。外注で開発した場合、保守運用も外注先に依頼するため、使用期間が長くなるほどコストが増加します。
一方、社内で市民開発を行えば、ナレッジが社内に蓄積され、保守運用も自社で対応できるため、運用コストを抑えられるというメリットがあります。
一方で、非エンジニアが開発を行うことには、注意すべき点もあります。
社内で市民開発を進めるためには、まずは教育体制を整えることが重要です。エンジニアのような専門的なプログラミング知識は必要ありませんが、ツールを使うための知識や操作方法を教育する体制を整える必要があります。ハンズオン研修やサポート体制が整っているツールを使うとベターです。
市民開発によって簡単にシステム開発を行うことが可能になりますが、一方で、部署や機能ごとに複数のシステムが乱立してしまう可能性もあります。システムが細分化され、それぞれ別のアプリとなってしまうと効率が悪くなるため、あらかじめ全体のシステムを管理する体制を整えておく必要があります。
また、システムは保守運用まで考えた体制作りをすることが重要です。社内にIT部門がある場合は、あらかじめIT部門と連携して開発をするとスムーズです。
不正アクセスやサイバー攻撃等に備えて、セキュリティ体制を整えておくことも重要です。システム開発に慣れていない非エンジニアが開発することになるので、セキュリティの基準やガイドラインを先に整えておく必要があります。また、開発時にセキュリティソフトを導入しておくこと、ネットワークのアクセス制限を設定することも有効です。人事情報や顧客情報等を扱うシステムを開発する際は、特に留意しましょう。
ServiceNowは業務毎にSaaS形態でサービスを提供するローコードツールで、個別のニーズにあわせてポータルやワークフローをカスタマイズ可能です。豊富なプラットホーム機能および業務毎のSaaSを提供するほか、機械学習にも対応しており、チャットボットや生成AIといった機能も利用可能です。トレーニングメニューも豊富でサポートも充実しているため、初心者でも安心して使い始められます。採用している企業が多く、業界も多種にわたります。
ご参考記事:「ServiceNowとは?業務効率化を実現するプラットフォームの魅力」
OutSystemsは多くの機能がドラッグ&ドロップ等、視覚的な操作で開発可能なローコードツールで、複雑なロジック構造もプログラミングなしで対応可能です。AIによる品質分析やセキュリティリスク自動検知、パフォーマンスの自動分析等により、セキュリティも十分担保された業務システムを開発できます。デザインの自由度も高く、パソコンやモバイル等デバイスに合わせてUI(ユーザーインターフェイス)を表示でき、非常に高性能なローコードツールです。
ご参考記事:「OutSystemsとは何か?6つの特徴と導入事例を紹介」
MicrosoftのPower Platformは、特にMicrosoft 365やAzure環境を活用している企業にとって非常に強力なローコードツールです。Power Apps、Power Automate、Power BIなどのツールを統合することで、業務の自動化やデータ分析を効率よく行うことができます。特に、Microsoft製品との親和性が高いため、既存のシステムとスムーズに統合でき、業務効率化を加速させることができます。
ご参考記事:「Power Platformとは?できることと活用事例を紹介」
本記事では市民開発のメリットや注意点について解説しました。市民開発をさらに発展させるためには、ローコード開発の基本を理解することが重要です。
詳しく知りたい方はぜひ以下の記事もご購読ください。
ご参考記事:「ローコード開発とは?主なプラットフォームや選び方をわかりやすく紹介」
市民開発は非エンジニアがノーコードツールやローコードツールを使ってシステム開発を行うことを指します。コストや開発期間を短縮でき、社内のDX人材育成にも役立つ一方、セキュリティやシステム管理体制については注意が必要となります。セキュリティの担保やシステム連携機能がついているServiceNowやOutSystems、またPower Platform等の高性能ローコードツールを使うことで、市民開発のデメリットをカバーしつつ、より効率的に開発することが可能です。
市民開発を検討しているものの、具体的にどのように導入すべきか迷っている担当者の方には、エクシオ・デジタルソリューションズによるローコード開発プラットフォームの導入支援の活用をおすすめします。
2025/05/27 | カテゴリ:アプリケーション・実⾏基盤
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